血を吸うカメラ Peeping Tom


● 血を吸うカメラ Peeping Tom
 『天国への階段』『黒水仙』『赤い靴』で40年代英国映画の巨匠となったマイケル・パウエルが60年に製作・監督した本作は、サイコ・ホラーのジャンルを先取りし(エド・ゲインをモデルにしたヒッチコックの『サイコ』も同年の作品)、窃視症と殺人の因果を、映画カメラマニアの目を通してメタ構築する独創的な表現主義が恐ろしすぎて・面白すぎたため本国では非難集中、ズダズタにカットされる。しかしそのズタ版がアメリカの深夜興行では大絶賛される。完成から20年後、完全版プリント上映を実現したのはパウエルの大ファン、マーティン・スコセッシである。第一級の仕掛けを堪能して下さい。
 マーク・ルイス(カール=ハインツ・ベーム)は映画のカメラマンだがヌード写真撮影のバイトもしている。亡き父は心理学者で〈恐怖〉への反応研究の第一人者だったが、幼いマークを対象にあらゆる恐怖実験を試みた。死の寸前の人間の恐怖と断末魔の表情。マークのなかでこの二つは分かち難く増幅してゆく。

製作・監督 マイケル・パウエル
出演 カール・ハインツ・ベーム、モイラ・シアラー、アンナ・マッシー
音楽 ブライアン・イスデール
撮影 オットー・ヘラー
編集 ノーマン・アクランド
美術 アーサー・ロウレンス、イヴォ・ベッドォス
60年 102分