アボルファズル・ジャリリの世界


○アボルファズル・ジャリリ(1957〜)。'83年にデビューした彼は、既に8本の長編劇映画を発表しているものの、学校に行かず働く子供たちの姿を描くことなどが問題となり、本国イランでは全ての作品が上映禁止となっている。しかしあくまでも自国に留まり、イランの現実、とりわけそこで生きる子供たちの赤裸々な姿をすくいとった作品を撮り続けている。'95年『7本のキャンドル』がヴェネチア国際映画祭で“金のオゼッラ賞”を受けたことを契機に、キアロスタミ、マフマルバフに続くイランの俊英として世界的注目を呼び、先の98年ロカルノ映画祭では新作『Dance of Dust』が銀豹賞を受賞、さらに広い支持を集めつつある。


● かさぶた Scabies
 文盲の少年ハメッドは、配っていたチラシが反政府的な内容だという理由で逮捕され、少年院へ送られる。そこでの生活は過酷だったが、喧嘩やいたずらを通して、次第に他の少年たちとの友情を築いていく。実際の少年院で、そこにいる子供たちを出演者に撮影し、逞しく生きる彼らの姿を躍動感たっぷりに描いた、長編第三作。87分。

監督・脚本・美術 アボルファズル・ジャリリ
出演 メヒディ・アサディ、アスガル・ゴルモハマッデ、ホセイン・マルミ
撮影 アタ・ハヤティ
編集 レザ・ホズイ
87年 87分



● 7本のキャンドル Det, Means Girl
 工場で働く少年シュアンの妹が原因不明の全身麻痺にかかる。シュアンは妹を救おうと奔走し手をつくすが、容態は変わらない。それでも奇跡を信じ、彼の努力は続く…。神話的様相さえ帯びる第五作。83分。

監督・脚本・美術・編集・衣装 アボルファズル・ジャリリ
出演 ゼイナブ・バルバンディ、ナビ・ジャリリアン、ホセイン・サキ
撮影 メヒディ・マジッド・バズィリ
94年 83分