成瀬巳喜男の世界
1905年東京市四谷坂町生まれ。工手学校を卒業後、松竹蒲田撮影所に入り、'30年監督デビュー。'35年PCLに移籍、同年『妻よ薔薇のやうに』が絶賛され、名声を確立する。その後『旅役者』『芝居道』などの「芸道もの」で真価を発揮。戦後は『めし』『浮雲』などの名作を次々に発表し、小津・黒澤と並ぶ巨匠として敬意と注目を集めつづけたが、'69年7月2日病没。近年、各国の映画祭で相次いで特集上映が催され、国際的評価も高い。
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旅役者
音楽=早坂文雄。70分。
日清戦争の頃。時局便乗の芝居で人気を得た新蔵(長谷川一夫)は自らの実力を過信し、師(古川緑波)や恋人(山田五十鈴)と別れ、東京に出る。しかし高慢な彼に周囲は冷たく、納得できる役にもつけない。非を悟った新蔵は、芸の修業に励む。戦時下の不自由さを感じさせない中古智の壮麗な美術、成瀬の練達した演出など見どころは尽きない。
83分。
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妻
96分。
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おかあさん
共演=香川京子。98分。
成瀬の代表作であり、日本映画史にその名を残す名作中の名作。赴任先のインドシナで愛し合った男(森雅之)を追って帰国したゆき子(高峰秀子)は、男の自堕落さに愛想をつかしながらも別れられず、行動をともにする。かすかな幸福と心の平穏を求める二人の姿を、戦後の喪失感とともに描き出した演出は、成瀬らしからぬ凄味さえ感じさせる。
共演=岡田茉莉子。124分。
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女の中にいる他人
共演=若林映子。 音楽=林光。106分。 全作品【モノクロ】 |