小さな兵隊 Le Petit Soldat


● 小さな兵隊 Le Petit Soldat
 アンナ・カリーナが初めて主演したゴダール作品として語り継がれてきた幻の傑作が30年ぶりにリバイバル公開。50年代のフランス社会に暗い影を落としたアルジェリア独立問題。複雑な背景を説明することもなく『小さな兵隊』は走り出し、疾走する。理念もないままに「アルジェリア独立を阻止するテロ組織」に身を置く秘密諜報員ブリュノ(ミシェル・シュボール)。写真家として暮らす彼は、魅力的なデンマーク娘のヴェロニカ(アンナ・カリーナ)と出会う。ブリュノは組織から敵対組織の要人暗殺の指令を受ける。ヴェロニカはブリュノのモデルになる。組織はブリュノの弱みにつけこもうとする。指令を断ったブリュノは組織から拷問を受ける。そして…。レマン湖のほとりの街、スイスのジュネーブを舞台にした秘密諜報員の暗躍を、ゴダールの初期作のほとんどを担当したラウル・クタールのカメラがハイ・コントラストなモノクロ映像で切りとる。断片的なエピソードが、『気狂いピエロ』のようにハイテンションで、『はなればなれに』のように饒舌に語られ、カリーナをとらえたポートレートのような素晴らしいショットは、長編映画初出演だった彼女のはつらつとした表情に満ち溢れ、観るものの視線をとらえて離さない。政治的理由でフランス当局が上映禁止を課したことが信じられないほど詩的で、ゴダール初期の才気とセンスを改めて実感させる、幸福に満ちた時間。

監督・脚本 ジャン=リュック・ゴダール
撮影 ラウル・クタール
音楽 モーリス・ルルー
出演 アンナ・カリーナ、ミシェル・シュボール、ラズロ・サボ、ポール・ボーヴェ 他
1960年 88分


【モノクロ】