エデンへの道 Der Weg nach Eden


● エデンへの道 Der Weg nach Eden
 ハンガリーの首都ブダペストに住むケシェリュー・ヤノーシュは、愛する家族を持った善良な夫であり父である。一見ごく普通な彼の仕事は、一日に六体の死体を解剖すること。この映画は、ハンガリーで最も認められた解剖医師の一人である彼の日常を、彼自身のモノローグで淡々と記録した、極めて異色なドキュメンタリーである。
 ケシェリューが解剖する遺体の大半はホスピスから運ばれる老人たち。彼は自分の死を想像しながら彼らにメスを入れる。実際の解剖の様子が克明に映し出されるとともに、キャメラは死者を敬う彼の姿や、解剖医師としての彼の誇りと厳格な信念、家庭人としての彼の日常を丹念に描いてゆく。常に死者と向かい合ってきた者の、死と生に対する揺るぎない、しかしどこかはかない視線、終末医療への辛辣な批評が、目の眩むような驚きと静かな感動をもって、死を直視し難い現代の意識下に響く。
 監督・脚本のロバート・エイドリアン・ペヨは'64年ルーマニア生まれ。長編第4作となる本作品で'96年モントリオール国際映画祭ベストドキュメンタリー賞などを受賞。

監督 ロバート・エイドリアン・ペヨ
出演 ケシェリュー・ヤノーシュ 他
撮影 ウォルフガング・レーナー
音楽 ポール・ウィンター
95年 86分