シェイディー・グローヴ


● シェイディー・グローヴ
 ひとは現実と折り合いをつけながら生きている。職場での人間関係や恋人との関係の中で、願望とのギャップに苦しみながら、迫ってくる現実と折り合いをつけて生きている。同じように要求されながら誰もが困惑しつつやり過ごすしかない、この人生の問題を、やはり困惑しながら映画化したような、そんな作品。立ち尽くしているのは、『Helpless』から『冷たい血』へと矢継ぎ早に新作を発表してきた青山真治監督ばかりでなく、主演の栗田麗(『東京兄妹』でブルーリボン新人賞)でありARATA(『ワンダフルライフ』で映画デビューしたトップモデル)ともいえるかもしれない。他人をかえりみる余裕もなく感情のままに生きてきた理花(栗田麗)。彼女が恋人に振られた夜、偶然がめぐりあわせたのは、目的を失いかけている青年、甲野(ARATA)だった。甲野は映画宣伝会社で働いているが上司と意見が合わず、リストラされかけているのだ。理花がもっていた深い森の古い写真が、ふたりを結びつける。どこにでもありそうでどこにもない森。静かな風景が感情をときほぐす。理花がふられた相手を執拗に追いかけても、静けさはより深まり、森の気配があたりを包んでいく。まさに90年代後半に登場するのにふさわしい雰囲気を持った佳作。99分。
監督 青山真治
出演 粟田麗、ARATA、関口知宏、光石研、斉藤陽一郎 他
脚本 青山真治、佐藤公美
撮影 田村正毅
録音 郡弘道
音楽 山田勲生、青山真治
照明 佐藤譲
美術 清水剛
99年 99分