パゾリーニ映画祭/その詩と映像(全14作品)


○ ピエル・パオロ・パゾリーニ(Pier Paolo Pasolini)は、1922年、イタリアのボローニャに生まれた。父はファシズムに親近感を抱く軍人で、息子との折り合いは悪かったという。その分、パゾリーニの愛情は母親へと向けられ、最初の詩集は母の故郷フリウリ地方の言葉で書かれた。ローマに移り詩人として世に出た彼は、フェリーニの『カビリアの夜』、ボロニーニの『汚れなき抱擁』などの脚本に参加することで、次第に映画へと接近する。

● パゾリーニ映画祭/その詩と映像(全14作品)
 '61年、初監督作『アッカトーネ』(Accattone 116分)を発表。“乞食”と呼ばれる貧しい青年と不良仲間たちの無為な日々を描き、リアルな描写の中に人間存在の気高さをかいま見せ、一躍注目される。第二作『マンマ・ローマ』(Mamma Roma 105分)では、主演にアンナ・マニャーニを起用、売春婦とその息子との見果てぬ夢を描いた。続く『ロゴパグ』(RoGoPaG 110分)では、ロッセリーニ、ゴダールらとのオムニバスに挑戦し、オーソン・ウェルズを主演に迎え、キリストの受難を笑いのめした。しかしキリスト教を冒 したと批難され、修正を余儀なくされパゾリーニも有罪判決を受ける。モラヴイアらも出演している注目すべきドキュメンタリー『愛の集会』(Comizi d'amore 92分)をはさんで、再びキリストの物語『奇跡の丘』(Il Vangelo secondo Matteo 137分)を撮り上げ、国際的な評価を決定づけた。
 イタリアの喜劇王トトを主演に『大きな鳥と小さな鳥』(Uccellacci e uccellini 86分)を撮った後、パリゾーニはさながら円熟期に入ったかのように『アポロンの地獄』(Edipo re 104分)、『テオレマ』(Teorema 98分)、『豚小屋』(Porcile 98分)、『王女メディア』(Medea 110分)といった傑作を連打する。古典を現代に再生させた『アポロン』『メディア』、公序良俗の神話を破壊し、その裏側に隠されたタブーを暴いた『テオレマ』『豚小屋』、いずれもパゾリーニの中心的なテーマを力強く展開するものとなった。
 前者の主題を、よりおおらかに奏でていくのが、続く『デカメロン』(Il Decameron 110分)、『カンタベリー物語』(I racconti di Canterbury 110分)、『アラビアンナイト』(Il fiore delle mille e una notte 129分)の“生の三部作”とするなら、『ソドムの市』(Salo,o le centorenti giornate di Sodoma 116分)は、タブーを暴くパゾリーニの神髄が激烈な形で表われた作品だ。
 大きなスキャンダルを巻き起こした『ソドムー』を最期に、パゾリーニは'75年11月2日ローマ郊外の空き地で、何者かに撲殺され、世を去った。その死は今も謎につつまれている。