至極のモダニスト─中平 康 レトロスペクティヴ


○ 中平 康 '26年東京生。父は洋画家で母はヴァイオリン教師の芸術一家に育つ。戦後初の松竹大船助監督募集にパスし映画界へ。同期には鈴木清順。川島雄三、木下恵介、黒澤明らの下で修行し、'54年に日活に移籍、監督第2作目の『狂った果実』が評判となる。以後、日本映画に類を見ないモダンでビザールな魅力あふれる怪作を連発するも、会社とは折り合いがあわず晩年は不遇。
● あいつと私
 明るい性格の人気者大学生(石原裕次郎)を取り巻く魅力的な女性たち(吉永小百合、芦川いずみら)とのセックス・コメディーがからっとした手際で描かれる。105分。
● 砂の上の植物群
 吉行淳之介原作の半道徳的なセックスを主題とした硬質で乾いた雰囲気の観念的な傾向の強い作品。95分。
● 才女気質
 京都の表具屋を舞台にしたソフィスティケイティッド・コメディ。気弱な亭主を尻に敷く轟夕起子の名演技! 87分。
● その壁を砕け
 中平版『真昼の暗黒』ともいうべき冤罪事件に取材した作品。メッセージ性よりもタイトな演出に注目。100分。
● 猟人日記
 夜毎好みの女をモノにしてはその日記をつけていた男(仲谷昇)が、ある日自分が関係した女が次々と殺されていることに気づく。容疑者として逮捕された男の運命は…。123分。
● あした晴れるか
 裕次郎&芦川いずみコンビの軽快コメディ。才能溢れる江戸っ子カメラマン裕次郎の活躍を描く。91分。
● 月曜日のユカ
 天然系小悪魔体質の主人公を演じる、若き日の加賀まりこのコケティッシュな魅力炸裂の伝説的作品。94分。
● 黒い賭博師・悪魔の左手
 小林旭主演の『ギャンブラー』シリーズの最終章にしてもっとも荒唐無稽な記念碑的おバカ映画。設定も演出もメチャクチャ。日活幹部の逆鱗に触れたらしい。94分。
● 危いことなら銭になる
 宍戸錠、浅丘ルリ子、長門裕之の豪華な顔ぶれで、元祖『ルパンV世』(!)風の犯罪コメディ。82分。