『風が吹くまま』


●風が吹くまま The Wind Will Carry Us
 『友だちのうちはどこ?』『そして人生 は続く』『桜桃の味』などで、オリエント世界の人々の何気ない感情をドキュメンタ ルな感動で伝えてきたイラン映画の巨匠アッバス・キアロスタミ(1940〜)の新作。 首都テヘランから遠く離れた小さな村で、ロケ地での監督自身をどこか感じさせるよ うな皮肉やユーモアと共に、スクリーンに吹きこむ風が、自然や人々の日常の営みを 聖なる高みへと送る傑作である。本年度ヴェネツィア国際映画祭で審査員グランプリ を受賞。
 クルドの村シアダレへTVと思われる撮影隊が、この地方の風変わりな葬儀の取材にき た。ディレクターのベーザード(ベーザード・ドーラニー)は危篤の老婆の死を待ち ながら、クルーの世話をしてくれる、そのおばあさんの孫の少年ファザードに取材の 事を口止めする。死は一向に訪れず、村の人々は労働に励み、赤ん坊が生まれ、子供 たちは手伝いと勉強に追われている。犬や山羊でさえ忙しそうだ。無為なスタッフか ら不平が出始め、ベーザードは焦燥感をつのらせてゆく。

監督・脚本・編集 アッバス・キアロスタミ
出演 ベーザード・ドーラニー
撮影 マハムード・カラリ
録音 ジャハンギール・ミルシェカリ
原案 マハムード・アイェディン
98年 118分 カラー


【モノクロ】