『戦争のはらわた』ROAD SHOW


●戦争のはらわた Cross of Iron
 「血まみれサム」こと、バイオレンス映画の 巨匠サム・ペキンパー、生涯唯一の戦争映画の登場です。第二次大戦末期、敗色濃い 東部戦線でソ連軍を相手に果敢に戦うドイツ下士官シュタイナー(ジェームズ・コ バーン)と彼の部下たちが、美化されることなくありのままの泥だらけの戦場で描か れます。ドイツの勝敗とは無関係に血まみれの戦闘に直面しつづける彼らの姿は、誇 り高き勇者などといった美辞麗句とは無縁で、鉄十字勲章欲しさに味方さえも死地に 追いやろうとするプロイセン貴族の上官の卑劣さとは対照的な誠実さを見せながら も、生きのびることが最優先とされています。ペキンパー監督の緻密な人間描写は、 「冷酷で残忍なドイツ兵」という一面的なイメージを解体すると同時に、「祖国のた めに戦う英雄」などといった単純化をも拒否して、ヒューマニティと対極にある戦場 で死と向き合うことを余儀なくされる個々人のドラマとして、この作品を結実させて います。『シン・レッド・ライン』や『プライベート・ライアン』などに見られるス タイルをはるかに先んじた、リアルで骨太な「戦場映画」の決定版です。

監督 サム・ペキンパー
出演 ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェル、ジェームズ・メーソン、デイヴィッド・ワープ―
脚本 ジュリアス・J・エプスティン、ハーバート・アスモディ
撮影 ジョン・コキュロン
音楽 アーネスト・ゴールド
編集 トニー・ローソン、マイク・エリス
美術 レッド・ハワース、マイク・エリス
77年 133分