『ぼくは歩いてゆく』公開記念 A・ジャリリ傑作選


検閲のあるイランで、児童映画は比較的自由に撮れる分野だ。しかし、ジャリリは学 校に行かず労働をする子供を描き続け、イランでは上映禁止となっている。けれど、 決して社会派なだけでなく、ある映画で森を開墾し泉を作った時には、綺麗な泉の出 現に喜ぶ村民の前で、撮影の為一瞬にしてその泉を爆破したという、映画への狂おし さに満ちた作家でもあるのだ。そんな美しさと現実味溢れる作風で海外での評価も高 い、ジャリリの特集です。

●ぼくは歩いてゆくDon
 ある日ジャリリは板金工場で、色々な名前で呼ばれる少年 に出会う。少年は、両親が麻薬中毒で出生届を出さなかったため、正式な名前がない のだという。この少年が、本作の主人公ファルハード。彼は仕事を、身分証を手に入 れるため町を歩き回る。いつか、学校で勉強できる日を夢見て…。少年をはじめ、彼 の両親や近所の人が自分自身を演じ、監督自らによるインタビューも挿入されるメタ 手法を交えた傑作。撮影終了後、ファルハードは実際に身分証を取得した。

監督・脚本・編集・美術 アボルファズル・ジャリリ
出演 ファルハード・バハルマンド、バフティアル・バハルマンド、ファルザネー・ハリリ
撮影 ファルザッド・ジョダット
録音 ハッサン・ザルファム
1998年 カラー 90分

●かさぶた Gal
 少年院に送られたハメッド。そこでの過酷な生活の中、彼は院の仲 間たちと遊びやケンカを通し、友達となっていく。実際に少年院に収容されている少 年たちが出演。87分。

●7本のキャンドル Det,Yani Dokhtar
 少年シュアンの妹バ ルトが原因不明の全身麻痺に。彼は妹を救おうと、様々な人に出会い、治療法を探し ていく。生命と神秘の美しさ宿る、83分。