『ハネムーン・キラーズ』LATE ROAD SHOW


●ハネムーン・キラーズ The Honeymoon Killers トリュフォーが「最も好きなアメリカ映画」と呼び、M・デュラスが「私の知る限り最も美しい愛の物語」と語った、『ハネムーン・キラーズ』。しかし残酷さと一歩早すぎた作風から、公開当時は保守的な社会の反発を受け、カルト・フィルムとして一部の映画ファンに支持されるだけとなっていた。主人公のマーサは太った欲求不満の中年女で、出会った結婚詐欺師のレイを愛してしまい、彼の姉や妹と偽って行動を共にする。だが嫉妬深い彼女は、目の前で彼が新しいターゲットを誘惑するのが許せず、彼の婚約者たちと卑俗で露骨な牽制のし合いのすえ、憎しみのあまり次々と殺害していく。そのリアルな会話のやり取りや殺害の過程が、白黒の乾いた画面や距離を置いた生々しいドキュメンタリータッチで撮影され、また常に動き続ける不安定な手持ちカメラは、異様な個性を作品に与えている。これは単純なシリアル・キラーではない、どうしようもなく、絶望的なまでに離れられない愛の悲劇の物語。

監督・脚本 レナード・カッスル
出演 シャ−リー・ストラー
撮影 オリヴァー・ウッド
音楽 グスタフ・マーラー
編集 スタン・ヴァーヴア、リチャード・プロフィ

1970年 モノクロ 103分