〈NO.1140〉『倦怠』ROAD SHOW


●倦怠 L'ennui 主人公マルタンは日常に行き詰まりを感じる哲学講師。しかし退屈なはずの生活が、不意に出会った17歳の少女と肉体関係を持った日から、彼女の心を所有できないことで気も狂わんばかりの苦悩に一変してしまう……。この作品は一見フランス映画にありがちな、セックスと恋愛について主人公が喋りまくる体裁を取っています。けれど見始めて驚くのは、ヒロインの今まで出会ったことのないキャラクターで、無表情だし可愛いけど小デブだし、悪女とは程遠くのったりして、それでいて不可思議なのです。彼女はマルタンの激情やヒステリックな行動を無感情に受け流し、彼の執拗な質問にもなんの悪意もなく素直に、しかし立て板に水な答えをずっと続けます。そしてその内容はただ自己中心的で他人への理解が微塵もないのですが、マルタン同様、我々も掴み所のない彼女に面食らい、気がつけば夢中になってその簡潔な言葉を待ち受けてしまうのです。原作はモラヴィアの同名作。大胆な性描写も話題な、是非見て戴きたい120分。

監督 セドリック・カーン
原作 アルベルト・モラヴィア
脚色 セドリック・カーン ローランス・フェレイラ・バルボッサ
撮影 パスカル・マルティ
編集 ヤン・デデ
美術 フランソワ・アブラネット
出演 シャルル・ベルリング ソフィー・ギルマン アリエル・ドンバール ロバート・クレイマー

1998年 カラー 120分