〈1160〉ヘルツォークに狂う〈全8作品入替上映〉


○ヴェンダース、ファスビンダーらと70年代以降のドイツ映画に世界を瞠目させた映画監督ヴェルナー・ヘルツォーク(1942〜。『ジュリアン』にも出演)。静謐を湛えた風貌とは裏腹に、都市や世界のあらゆる辺境で、凄まじいロケを敢行した数々の作品の中心に、荒ぶる狂気、伝説の俳優クラウス・キンスキー(1926〜91)がいた。静と動の二人の鬼才の出会いから確執の連続に至る、数奇なドキュメンタリー新作『キンスキー、我が最愛の敵』(Mein Liebster Feind ジェイソン・ロバーツとミック・ジャガー版!『フィツカラルド』など、希少な記録が満載。95分。)と傑作選で、その足跡をたどる。

●カスパー・ハウザーの謎 Jeder fur sich und Gott gagen alle 隔離され、言葉も知らず育ったカスパー・ハウザーは、突然捨てられ、誰からも持て余され、王族の隠し子としてサーカスの見世物に供される。サーカスを逃げ出し、ある紳士の元でようやく穏やかな日々を送るが…。実話から荘厳なフィクションを導くヘルツォークの本質を鮮やかに示す、最も秀れた感動作。カンヌ映画祭審査員特別賞ほか受賞。109分。
●闇と沈黙の国 Land des Schweigens und der Dunkelheit 聴覚と視覚を失いながらなお障害者に介助の手をさしのべる56歳のフィニィ・シュトラウビンガーを通し、「触れる世界」へ到達した傑作ドキュメンタリー。85分。
●コブラ・ヴェルデ―緑の蛇 Cobra Verde 自分の王国を築くために山賊から、奴隷商人へとアフリカに渡ったコブラ・ヴェルデ。主人公の野望のままにパワー全開するキンスキーとの最後の仕事。名古屋初公開。110分。
●ヴォイツェック Woyzeck ビューヒナーの著名な未完の原作を映画化。愚直な射撃兵の滑稽で悲しい生き様を描く。共演のエーファ・マッテスのカンヌ助演女優賞受賞に、キンスキーは嫉妬しなかったとか。80分。
●小人の饗宴 Auch Zwerge haben klein angefangen 施設に閉ざされた小人たちの大反乱。小人、猿、鶏、らくだたちが呼び起こす不安感と、奇妙な「かわいさ」は圧巻。物議をかもした金字塔的傑作。必見の96分。
●アギーレ・神の怒り Aguirre, der Zorn Gottes 1560年、アマゾンの黄金郷をめざすスペイン分隊の困難な旅を、自然描写から神話的世界への遡行を見事に収めたトーマス・マオホの撮影、ポポル・ヴーの音楽、キンスキーの名演で壮大に歌いあげる。『地獄の黙示録』にも影響を与えた。93分。
●フィツカラルド Fitzcarraldo ペルーのジャングルの奥地にオペラハウスを建てる、途方も無い夢に生きるフィツカラルドを、オペラの名曲を背景に綴る娯楽大作。カンヌ映画祭監督賞。本作を支えた?ヘルツォークVSキンスキーによる危険度100%の裏舞台は『キンスキー、…』でどうぞ。157分。