〈1178〉鈴木清順レトロスペクティヴ〈全19作品〉
●殺しの烙印 殺し屋たちの、ナンバーワンの座をめぐる死闘を描いたハードボイルドアクション。奇抜なアイディアと実験的なテクニックに加え、ヒロイン真理アンヌの妖しい魅力が炸裂。日本映画の枠を超えた傑作として、今も熱い支持を得る。91分。
●すべてが狂ってる フランスのヌーヴェルヴァーグを意識して企画された異色の作品。破滅的な若者の日常を、躍動的な手持ちキャメラや無秩序なストーリー展開で描き出し、奇妙な魅力を放つ。吉永小百合の出演シーンも見逃せない。72分。
●探偵事務所23 くたばれ悪党ども 日活アクション・コメディの金字塔的快作。大藪春彦の連作短編をもとに、私立探偵(宍戸錠)とギャング組織の対立を描く。ユーモア、スリル、アクションが絶妙のバランスで派手に爆発。サービス満点の一本だ。88分。
●勝利をわが手に 港の乾杯 本名鈴木清太郎名義での記念すべきデビュー作。流行歌「港の乾杯」をモチーフに、船乗りの兄、騎手の弟を主人公にした歌謡映画。脚本は浦山桐郎ほか。65分。
●裸女と拳銃 デビュー翌年の第6作。白木マリをヒロインに、麻薬組織に挑む新聞記者の活躍を描く。小気味よい演出が冴えたエロティック・アクション。88分。
●暗黒街の美女 本名清太郎から清順に改名し、気合の入った第7作。前作に続き白木マリ、水島道太郎の2人を主演に、ダイヤをめぐる攻防を描いたサスペンス。脇をかためる芦田伸介、高品格らも渋く好演。脚本は佐治乾。87分。
●踏みはずした春 不良少年(小林旭)と、彼を更生させようと尽力する女性(左幸子)を描いた第8作。道徳的な説教臭が微塵も無く、躍動感あふれる演出が、清順への注目を高めた。共演は浅丘ルリ子、宍戸錠ほか。99分。
●らぶれたあ たった4人の登場人物が、ラブレターを軸に織りなす恋愛模様を描いた、11本めの監督作品。ラストは、とんでもないドンデン返しで、小林信彦が珍品映画ベスト1に選出。40分。
●散弾銃の男 天竜川の森林を分け入ると、そこはなぜか西部劇の世界……。日活無国籍アクションの真髄を見せる、清順21本めのデタラメウエスタン。主演は二谷英明、芦川いづみ。84分。
●野獣の青春 いわゆる清順美学が開花した第28作。元刑事(宍戸錠)が二つのギャング組織に立ち向かうメインストーリーを、凝りに凝った特異なディテールの数々が飾る。自由奔放な傑作のひとつ。92分。
●悪太郎 前作『野獣〜』の耽美的世界から一転、オーソドックスで痛快な青春映画に仕上げた、監督自らが“傑作”と呼ぶ一本。美術監督・木村威夫との初コンビ作としても必見。主演は山内賢、和泉雅子。95分。
●関東無宿 第30作にして初の任 映画。歌舞伎的で華麗な演出を駆使し、独自の個性を鮮やかに印象づけた作品。主演は小林旭、松原知恵子。93分。
●花と怒涛 前作につづく小林旭主演の任 アクション。大正中期の浅草を舞台に、渡世人の波乱に富んだ半生を描く。脚本にも名を連ねた木村威夫の美術が圧巻。92分。
●肉体の門 田村泰次郎のベストセラー小説をもとに、敗戦直後の東京で、混乱の中を生き抜く5人の娼婦を描いた、第32作。戦中派清順の思いの丈が込められた重要な一本だ。主演は野川由美子、宍戸錠。90分。
●俺たちの血が許さない 小林旭と高橋英樹が初共演し、兄弟役を演じた33作。随所に織り込まれたシュールで幻想的なシーンが導火線となり、一触即発のサスペンスを築く。97分。
●刺青一代 映画青年たちを熱狂させ、清順の名を一躍高めた36作。渡世のしがらみから殺人を犯した兄弟の哀しい逃亡劇を、けんらんたる色彩とデザイン感覚で描く。主演は高橋英樹、和泉雅子。87分。
●河内カルメン 河内から都会へ出てきた娘(野川由美子)の遍歴を描いた37作。日常的なシーンに、奇怪で夢幻的シーンを織りまぜるスタイルがさらに冴えた一作。89分。
●東京流れ者 新人・渡哲也を売り出すための歌謡アクション……のはずが、アヴァンギャルドな映像美弾ける傑作となった38作。低予算を逆手にとった抽象的なセット、原色にこだわりぬいた色彩設計が素晴らしい。……が日活社内では要注意人物に。89分。
●けんかえれじい 痛快なアクション、おおらかなユーモア、青春のリリシズム、すべてが絶妙に融け合い青春絵巻の傑作となった39作。主演は高橋英樹。86分。
【モノクロ 一部カラー】