〈1191〉『モレク神』ROAD SHOW


●モレク神 Moloch V・カネフスキー(『動くな、死ね、甦れ!』)、A・ゲルマン(『フルスタリョフ、車を!』)、A・バラバノフ(『フリークスも人間も』)……「映画史」をいまだ根底から揺るがす、偉大にして狂暴なロシア人たち。ドキュメンタリーとフィクション、フィルムとビデオ、長編と短編などの枠を超越し30本以上の作品を手懸け、その評価も映画だけに留まらぬアレクサンドル・ソクーロフ監督(1951〜)もその一人だ。  新作は、アドルフ・ヒトラーとその愛人(敗戦直前に結婚)エバ・ブラウンが、腹心のゲッペルスと妻マグダ、道化じみたマルティン・ボルマンらを迎えて山荘ベルヒデス・ガーデンで過す束の間の休暇をどこか歪んだ絵画めいた色彩で描写してゆく。  冒頭、「荒鷲の要塞」と呼ばれた石仕様の山荘で目覚め、宗教神殿の捧げ物のように裸身で直立するエバは、ヒトラーの前では愛人として歪み、矮小する。また晩餐や茶会での男たちはネジのはずれた会話、誇大妄想をくり返す。究明し尽くされながら、いまなお世界に芽吹くヒトラー信仰へ警鐘を鳴らす。’99年カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞(ユーリー・アラーボフ)受賞。108分。

監督 アレクサンドル・ソクーロフ
脚本 ユーリー・アラーボフ
撮影 アレクセイ・フョードロフ、アナトリー・ローディオノフ
美術 セルゲイ・ココーフキン
衣装 リーディヤ・クリユーコヴァ
編集 レーダ・セミョーノヴァ
出演 レオニード・マズガヴォイ、エレーナ・ルファーノヴァ、レオニード・ソーコル ほか

1999年 108分


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