〈1211〉『魔王』ROAD SHOW
●魔王 The Ogre ドイツが生んだ名匠フォルカー・シュレンドルフが、全世界を震撼させた『ブリキの太鼓』から20年の時を経、さらに壮大なスケールで贈る、美しく、残酷な叙情詩、それが『魔王』。原題の“Ogre”とは人食い鬼を意味し、子供たちが読む絵本の中の悪魔的存在として知られている言葉。シュレンドルは「“Ogre”とは聖と悪を持つ存在、つまりだれもが皆もっている心の二面性なのだ」と語っている。
時は1943年。スターリングラードの攻防戦に敗れたドイツ軍はソ連から撤退、第三帝国の未来に暗雲が広がりつつあった。そんな頃、馬を駆り、3匹のドーベルマンを従えて、明日のドイツを担う少年たちを捜し求める男の姿があった。フランス人でありながら数奇な運命に弄ばれ、今はドイツのために働く男アベルだ。自らの行動が子供たちを救うという信念にとらわれた彼を、周りの人々はやがて“鬼(Ogre)”と呼ぶ……。
戦時下のプロシアの森を“お伽話の旅人”のようにさ迷い、したたかに生き抜く主人公を演じるのはジョン・マルコヴィッチ。“この映画はマルコヴィッチという存在そのものが始まり”とシュレンドルフが語るとおり、ハマリ役を得、かつてない充実した演技を見せる。脚本はルイス・ブニュエル作品で知られるジャン=クロード・カリエール。そして音楽はマイケル・ナイマン。豪華なスタッフの手腕も見どころだ。118分。
監督・脚本 フォルカー・シュレンドルフ
原作・脚本 ミシェル・トゥルニエ
脚本 ジャン・クロード・カリエール
音楽 マイケル・ナイマン
出演 ジョン・マルコヴィッチ、アーミン・ミューラー・スタール、ゴットフリート・ジョン ほか
1996年 118分
【カラー】