〈1222〉『まぶだち』ROAD SHOW


●まぶだち 多くの観客を魅了した傑作『この窓は君のもの』の古厩智之が帰ってきました。抜けるような青空。遠くの山の稜線が見える地平線。ゆったりと流れる川。山あいの小さな街を舞台に、悩みともいえない、形にならないモヤモヤした気分を胸いっぱいに抱えた中学生たちの、楽しくて切ない日々が、スクリーンの端から端、手前から奥まですべてを使い切って描かれます。古厩監督は、故郷長野を舞台にしながらも、ノスタルジーに溺れずに、冷静にドラマを組み立て、のびのびとした作品を作りあげました。  リーダー格のサダトモは、ライバル意識を隠せないテツヤや、ちょっと気弱な周二と、毎日連れだって、暗くなるまで遊び、あまり勉強もせず、威圧的で屈折したスパルタ担任教師には「クズ」とランク付けされています。ある日発覚した万引き事件から、3人は思いがけず人生の岐路に立たされてしまいます。感受性の強い少年たちと無理解な大人との対立の図式へと単純に落ち着きそうな物語が、予想できる枠を大きく越えて、すべての人に何かを突きつけてくるのは、少年たちが(そして監督が)熟慮の末にたどる切実な軌跡が、確かに写っているからでしょう。必見の99分。

監督・脚本 古厩智之
撮影 猪本雅三
照明 松隈信一 録音 畑幸太郎 美術 須坂文昭 編集 掛須秀一
音楽 茂野雅道
出演 沖津和 高橋涼輔 中島裕太 清水幹生 光石研 矢代朝子 ほか

2000年 99分


【カラー】