〈1231〉『血の記憶』MORNING & LATE ROAD SHOW
●血の記憶 Sangue Vivo イタリア南部のサレント地方。灼けつく陽光と乾いた砂色の町で、貧しさにあえぎ多発する犯罪に悩みながらも、人々が今も熱烈に愛する伝統音楽・ピッツィカがある。もともとは毒グモに刺された人間を癒すため、その苦痛を上回る激しいリズムによってトランス状態を生み出した、熱病のごとく情熱的でまさしく血のたぎる音楽だ。本作は、この怒涛のリズムにふさわしい魂を持った兄弟の葛藤と、その狂おしい血がもたらす悲劇を描く。兄のピーノを演じるピーノ・ズィンバは実際、ピッツィカの演奏グループ「グルッポ・ゾエ」のメンバーで、タンバリン奏者。彼が毒グモの絵に彩られたタンバリンを打ち鳴らし、女性ヴォーカルが忘我の境地へと到りつつ、太古から我々の体内に宿り続ける血を喚起するような声で歌う演奏シーンは、本作品中でも白眉。サントラもグルッポ・ゾエが担当している。
ピーノとドナートの兄弟は、父の死以来衝突が続いている。マフィアのタバコ密輸入を手伝うピーノは、妻子からも反発を受けて家庭内は苛立ち、繊細さゆえ世の中に絶望するドナートは麻薬や犯罪へと落ちていく。そんな中、唯一の生きがいを音楽に求めるピーノは長年の夢だったデビュー契約を手に入れるが、その矢先、ドナートがマフィアとトラブルを起こしてしまう…。96分。
監督 エドアルド・ウィンスピア
脚本 ジョルジア・チェチェレ、エドアルド・ウィンスピア
撮影 パオロ・カルネーラ
音楽 ZOE
出演 ピーノ・スィンバ、ランベルト・プローポ ほか
2000年 96分
【カラー】