〈1243〉『A2』ROAD SHOW
●A2 オウム真理教(現アレフ)の広報副部長・荒木浩を追いながら、オウムとマスコミ、オウムと公安警察との軋轢を描いたドキュメンタリー『A』。監督の森達也は、過酷な状況に立たされた荒木のつかの間の帰郷で映画を終らせた後、「自らの主題は完結した。続編は無い」と断言した。しかし、'96年4月以降、各地域でオウム排斥運動が急速に激しさを増し、住民票の受理を拒む行政も相次いで、施設を追われた信者たちの漂流が始まっていた。
'99年9月、3年の中断を経、森は再びカメラをオウムに向ける。「時がたつほどオウムに対する社会の憎悪が深くなっている。なぜ、ここまで社会が劣悪化しているのか?」そんな問題提起を胸に、森と、前作にひき続き製作・撮影を手がける安岡卓治は、信者と住民の対立が最も激しいとされている地を訪ね、撮影をスタートした。しかし、そこで彼らが見たものは、排斥運動にかかわる住民達と信者との間の不思議な友好関係だった……。
この体験を機に撮影は一気に加速する。カメラは各地を巡り、オウムとの対話を求める右翼団体への取材、松本サリン事件の被害者・河野義行氏とオウム幹部との対話、上祐元幹部へのインタビューなど、いずれの内容もマスコミ報道とは一線を画した新たな視点から、知られざる現実の一断面を切りとっていく。映画は、そうした動向を次々と提示し、住民と信者とのささやかな和解に一縷の希望を見い出しつつ、容易に憎悪が噴出する市民社会に変貌したことの責任を、やはりオウム自身へと問いかけてゆく。そこに答えはあるのか…?
森と安岡による2台のデジタルビデオでの撮影は、前作に比し安定度を増し、特に、警察、右翼、市民が入り乱れる大混乱の場で、立体的に状況を構築し、臨場感を生み出している。ともあれ、待望の続編。見て下さい。絶対面白いから。
監督・撮影・編集 森達也
製作・撮影・編集 安岡卓治
2001年 126分
●A(インターナショナル・エディション) オウム真理教をめぐる唯一無比のインサイドレポート。海外用に新たなシーンを加えて編集されたニュー・ヴァージョン。『A2』と一緒に見よう!136分。
5/11(土)1:15 森達也監督 安岡卓治(プロデューサー) 舞台挨拶
【カラー】