〈1247〉『ふたつの時、ふたりの時間』ROAD SHOW
●ふたつの時、ふたりの時間 那邊幾點 『愛情萬歳』『河』『Hole』を経て、台湾ニューウエイブの監督の中、都市の孤独を主題にした作品の芸術性の高さ、国際的評価、共に随一のの新作。自然光と巧緻な照明が織り成す究極の撮影(ブノワ・ドゥロム:トラン・アン・ユンやベネックス作品を担当)、心象を揺るがす音響デザイン(ドゥ―・ドゥ―ツー:侯孝賢とエドワード・ヤンの代表作を担当)、『グリーン・デスティニー』でアカデミー受賞したイップ・カムティンの、金魚鉢のように人物を浮遊させるスタイリッシュな美術により、パリと台北の二都市で喪失感と時間だけを共有する離ればなれの人々を描写しながら、監督自身のテーマを鮮烈に追求した陶酔感溢れる傑作だ。カメオ出演のジャン=ピエール・レオーと共に名作『大人は判ってくれない』の引用が切なく美しい。
街頭で時計を売るシャオカン(リー・カーション:トリュフォーとレオーのように、蔡監督の主人公を演じ続けている)は父(ミャオ・ティエン)を失った。葬儀後間もなく、シアンチー(チェン・シアンチー:『エドワード・ヤンの恋愛時代』)に自分の腕時計を売り、彼女は時計をつけてパリへ立った。父の死後、奇行に走る母、なすすべなく日を送るシャオカン、パリで異邦人の痛烈な孤独を知るシアンチー、三人の時間は奇妙に同調してゆく…。116分。
監督・脚本 ツァイ・ミンリャン
撮影 ブノア・ドゥロム
音響 ドゥ―・ドゥ―ツー
美術 イップ・カムティン
出演 リー・カーション、チェン・シアンチー、イップ・トン、ジャン=ピエール・レオ― ほか
2001年 116分
【カラー】