〈1273〉『まぼろし』ROAD SHOW


●まぼろし Sous le Sable 『海をみる』や『サマードレス』などの刺激的な短編作品や、長編の『クリミナル・ラヴァーズ』『焼け石に水』で、フランスでもっとも期待される若手監督フランソワ・オゾン。今回は『愛の嵐』などでエキセントリックな美貌を讚えられるシャーロット・ランプリングを主演にリアルな50代を描く。  例年通り、夏のバカンスにやってきたマリー(ランプリング)。海辺の別荘で、25年間連れ添ってきた夫(ブリュノ・クレメール)が突然消える。失踪か、自殺なのか判然としないまま、マリーはひとり残される。夫の影を追いながら、理由を探し、思慕を募らせる。友人の前では「死」など認めず、まるで以前と変わらないように振舞うマリー。友人の紹介で同世代の男性と出会ったりもするが、夫の影も、夫への想いをも消し去ることは出来ない。それは長い時間をかけて死を受け入れていく過程、「喪の仕事」と呼ばれる時間だった。そんなある日、海辺で死体が発見されたとの連絡が入る……。ノーメイクの素顔をさらして、実年齢のままでマリー役を演じたランプリング。『蘭の肉体』でも共演したクレメールと、本当に長年連れ添ってきたかのような息の合った円熟味のある演技を見せる一方、凄みさえも感じさせる存在感で、「まぼろし」のような物語に立体感を与えている。95分。

監督・脚本 フランソワ・オゾン
共同脚本 エマニュエル・バーンハイム、マリナ・ド・ヴァン、マルシア・ロマーノ
撮影 ジャンヌ・ラポワリー、アントワーヌ・エベルル
編集 ローランス・バヴェダー
音楽 フィリップ・ロンビ
出演 シャーロット・ランプリング、ブリュノ・クレメール ほか

2001年 95分


【カラー】