〈1274〉『にっぽん零年』LATE & MORNING ROAD SHOW


●にっぽん零年 永らく封印されたままだった幻のドキュメンタリーが、34年の沈黙を破りいよいよ劇場公開  '70年安保反対闘争に揺れ、学生と機動隊の衝突で騒然とする'68年、東京。デビュー間もない監督の藤田繁矢(敏八)と河辺和夫らは、ゲリラ的に街を横断しながら、新宿のフーテン少女、東大の学生運動家と恋人の新劇研究生、また陸上自衛隊に入った青年らにインタビューをし、時に空気のようにさりげなく日常の瞬間に立ちあう。そしてカメラは微妙な距離を持って、フーテンたちの空虚な会話と苛立ちや、学生運動家が裕福で理解ある両親と暮らす姿や、自衛隊員たちの微かな失望感をも客観的に捉えていく。だが、学園闘争はあまりに熱を帯び、本作にも突然の製作中止命令が下った。それでもプロデューサー・大塚和の英断によって、藤田たちは密かに映画を完成させる…。東大の運動家と恋人が8月6日の平和集会のため、母の被爆した広島へと向かい、そこで被爆者と語り合うシーンは圧巻。弁の立つ青年が、現実の衝撃の前で言葉を失っていく、その素直なおののきこそが人間らしく、美しい。時代の活写としても貴重な、74分。

構成・演出 藤田繁矢(敏八)、河辺和夫
撮影 大津幸四郎、義江道夫、飯島実、八木勲
編集 丹治睦夫、岡安イ、井上治
音楽 佐藤允彦
録音 長谷川良雄、佐藤亨
効果 杉崎友治郎
助監督 小原宏裕、岡田裕

1969年 74分


【カラー】