〈1292〉『歩く、人』LATE ROAD SHOW


●歩く、人 雪降りつもる北海道の小さな町。造り酒屋を営む本間信雄(緒形拳)は、亡き妻の三回忌を2日後に控えた今朝も、片道8キロを歩いて鮭の孵化場へ通っていた。そこには彼がほのかに心寄せる美和子(石井佐代子)がいる。2人がやすらかにゆったりと時を過ごしている一方で、信雄の息子たち(香川照之、林泰文)は、三回忌を前に久々に再会していた。信雄への反発から家を出た兄と、家に残り父の面倒をみている弟の間には、微妙な反目がある。帰りたくても帰れない兄と、出たくても出られない弟。三回忌の席は、父と子3人の想いが静かにぶつかりあう場となった……。  家族の信頼と葛藤を絶妙な会話と演出で綴ったのは『海賊版BOOTLEG FILM』『殺し』そして本作で、3年連続カンヌ出品を果たした逸材・小林政広監督。F・トリュフォーを敬愛し渡仏、帰国後シナリオライターとして活躍し、'96年監督デビュー。本作は第5作目となる。役者陣の軽妙かつ味わい深い演技も光る好編だ。共演=大塚寧々。103分。

監督 小林政広
撮影 北信康
照明 木村匡博
録音 瀬谷満
編集 金子尚樹
出演 緒形拳、林泰文、占部房子、石井佐代子、大塚寧々、香川照之

2001年 103分


【カラー】