〈1299〉『火星のカノン』LATE ROAD SHOW


●火星のカノン 前作『冬の河童』から7年、待望久しい風間志織監督の新作『火星のカノン』は、世界そのものを優しく慈しむような素晴らしい傑作として仕上がった。絹子(久野真紀子)は、家庭を持つ公平(小日向文世)と恋愛中。火曜日にしか会えないふたりだが、それなりに幸せな関係を続けている。絹子の友人の聖(中村麻美)は、そんなふたりの関係に納得できないでいる。ちょっとお調子者の路上詩人、真鍋(KEE)は聖を優しく見守っている。この決して大きくはない世界で起きるいくつかの事件(絹子が風邪を引いたり、公平とケンカしたりといったような)は、ともすれば平凡なままに過ぎていったり、「不倫」という、ありきたりな言葉で説明だけがなされていったりするものだが、風間志織は、時に突き放し、時に抱きしめるように、登場人物の心のひだを丁寧に写しとる。『三月のライオン』の石井勲の撮影も本当に素晴らしく、小品ながらとてもぜいたくな121分。

監督・脚本 風間志織
撮影 石井勲
照明 大阪章夫
録音 鈴木昭彦
美術 松本知恵
音楽 阿部正也
脚本 小川智子
出演 久野真紀子、小日向文世、中村麻美、KEE

2001年 121分

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【カラー】