〈1305〉『ロベルト・スッコ』ROAD SHOW


●ロベルト・スッコ Robert Succo イタリア北部で起きた凄惨な殺人事件から5年──1986年、南仏トゥーロンの浜辺に異国訛りのフランス語をまくしたてる若い男がいた。休暇中の少女レア(イジルド・ル・ベスコ)は、カートと名乗るこの男(ステファノ・カセッティ)にごく自然に恋し、作り話めいているのに嘘の自覚も無いような彼の話に疑問を感じながらも、夏の終りに一夜を過ごし、学校のあるスイス国境に近いアヌシーへ帰ってゆく。ほどなくアヌシーで警官が殺され銃が奪われた。続いて主婦の誘拐、タクシー襲撃、強盗、と脈絡なく事件が頻発し、捜査は混乱してゆく。その頃、レアの前にカートが現れた。左眉に傷を負い、夏とは違う車に乗っている。再びデートを重ね、突然姿を消し、思い出したようにレアの前に現れることが繰り返された……。  犯罪性向のとりとめのなさ、そしてM・スコセッシ作品の登場人物を地でゆくような、時として自己へも向かうヴァイオレンスの発露。「理由なき殺人犯」としてヨーロッパを震撼させた実在の主人公カート(本名:ロベルト・スッコ)の事件の闇を再構築した監督C・カーンは、前作『倦怠』でモラヴィアのエロスとエゴイズムを絶妙に調和させたように、本作でも「感情の獣」と化したスッコの行動を追う冷徹な視線と、スッコが目にするTV、運転するクルマ、数々の証拠写真などモティーフへの情熱的なこだわりで、観る者の不安をかきたて、失われた「理由」を問いかける。傑作 124分。

監督・脚本 セドリック・カーン
原作 パスカル・フロマン
撮影 パスカル・マルティ
録音 エリック・デュブルデル
編集 ヤン・ディディエ
挿入歌 マリアンヌ・フェイスフル
出演 ステファノ・カセッティ、イジルド・ル・ベスコ

2001年 124分


【カラー】