〈1316〉『孤高』LATE ROAD SHOW
●孤高 Les Hautes Solitudes このモノクロームの作品には、幾人かの女優が、なかでもふたりの女優の姿が写されている。ただし、タイトルもクレジットもない。セリフもなければ音楽もなく、さらに言えば、ストーリーも、ない。多くの映画を構成する要素はほとんどないが、雄弁な視線や、豊穰な時間や、濃密な空間が、たしかに、ある。そして、この断片的なフィルムを構成したフィリップ・ガレルの深い絶望と断念こそが、おそらくは、ある。すべてのショットに満ちあふれる強い想いは観る者に深く深くしみわたってくる。これは特別な映画だ。
登場するのは、ベルベット・アンダーグラウンドの歌姫にして、ガレルの恋人ニコと、ゴダールの『勝手にしやがれ』などで知られるジーン・セバーグ。ふたりの女優のつややかな姿は、不幸な死を遂げた事実からは、あまりにも遠い。80分。
監督 フィリップ・ガレル
出演 ジーン・セバーグ、ニコ、ティナ・オーモン、ロラン・テルジエフ
1974年 80分
【カラー】