〈1317〉『女はバス停で服を着替えた』LATE ROAD SHOW
●女はバス停で服を着替えた 日活ロマンポルノ界の巨匠として知られる、小沼勝。近年では、小沼監督を対象にしたドキュメンタリー映画『サディスティック&マゾヒスティック』(監督:中田秀夫)が作られ、旧作の特集上映も、男女とわぬ若者たちによって盛況を極めたのが記憶に新しい。本作は、あらためて高い評価を得ているこの鬼才が、現在俳優として乗りに乗っている遠藤憲一と、テレビドラマで人気の美人女優・戸田菜穂を主役に迎え、撮りあげた最新作だ。謎めいた影を背負い、故郷の北海道に戻って蕎麦打ちに専念する男と、やはり心に傷を持ちつつ、それでも新たに一歩踏み出すことを求めて男を追ってきた女。彼らの惹かれあいながらも、共有する暗い過去にさいなまれ追われるように、欲望を押し殺していく息苦しい恋情が、えもいわれぬ濃密な情感を醸しながら描かれていく。戸田菜穂はこれまでの清楚なイメージとうって変わり、静謐な映像に官能が燃えあがる小沼美学に応え、情念的で大胆な演技を披露。印象的なタイトルも彼女の発案によるものだ。北海道の雄大さと、それまでの秘めた感情が爆発するような、ラストの驚きに満ちた演出は必見!99分。
監督 小沼勝
脚本 長谷川弓子、安倍照男、村上修
撮影 鈴木耕一
照明 矢部一男
録音 福田伸
編集 矢船陽介
美術 山崎輝、岩本一成
音楽 西岡俊明
出演 戸田菜穂、遠藤憲一、中村麻美、片桐夕子、モロ師岡、北村和夫
2002年 99分
【カラー】