〈1332〉『過去のない男』&アキ・カウリスマキ・ショウ!!〈15プロ・入替制〉


 集大成ともいえる新作、過去のない男(Mies vailla menneisyytte 97分)。記憶と棲み家を失くした男の切なく可笑しい感動作でカンヌ受賞。日本公開もクレイジーケンバンドのブレイクと共に大好評でした。今回は旧作も揃えてスクリーンにカンバック 夏の大感謝祭アキ・カウリスマキ・ショウ!! です。アキのタッチを決めた初期の傑作パラダイスの夕暮れ(Varjoja paratiisissa 75分)でゴミ収集人役だったマッティ・ペロンパー(常連男優。'95年没)になりきって上映作品を分別してご紹介 ツンドラ地帯からきた特大リーゼント、とんがりブーツの「売れないバンド」と悪徳エージェント(俺の役)の抱腹絶倒のロードムーヴィ、レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(Leningrad Cowboys Go America 79分)と続編モーゼに会う(Leningrad Cowboys、Meet Moses 94分)。とどめは中・短編集AK・ミーツ・ロケンロール(トータル・バラライカ・ショー他4作品・計80分)で。レア作品・(Calamari Union 80分)ではリーゼント以前のL・Cメンバーが演奏。さて次は、文芸物。罪と罰(Rikos ja rangaistus 93分)、ハムレット・ゴーズ・ビジネス(Hamlet liikemaailmassa 86分)、ラヴィ・ド・ボエーム(La Vie de boheme 100分)は、人生の悲哀を丁寧に描写した、北欧のナルセミキオと呼びたい秀作群。そしてポスト・モダンのプロレタリアート、アキの真骨頂が真夜中の虹(Ariel 73分)、マッチ工場の少女(Tulitikkutehtaan tytte 70分)、浮き雲(Kauas pilvet karkaavat 96分)。(俺も含め )登場人物の存在の愛しさが際立つ必見の傑作。最後は、シネフィル、アキを象徴する孤独の、カタルシスの、そして恋の三作品。最高にスタイリッシュなコントラクト・キラー(I Hired a Contract Killer 80分)ダサかわいい愛しのタチアナ(Pida huivista kiinni, Tatjana 62分)、白黒、無声、古風なお話、されど心を侵す類いまれな感動作、白い花びら(Juha 78分)。以上15プログラム。じんわり、きます。


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