カール・Th・ドライヤー(1889年デンマーク生まれ。1968年没)を見ること。他の彩色を寄せつけぬ白と黒との陰影の絶対的な輝きを。静謐をたたえた時間に潜む、カメラのたゆまぬ変容を。宗教的な背景にほとばしる、身を焦がすような人間の感情を。スクリーンだけがもたらす、時代を超えた体験だ。お見逃しなく。 ●裁かるるジャンヌ La Passion de Jeanne d'Arc ドライヤーの無声映画の頂点にして映画史の金字塔でもある。ジャンヌ・ダルクの裁判を、凝縮した時間のなかで表現しつくし、ゴダールのイコンにもなった。前衛詩人アントナン・アルトーが出演。24コマ81分。 ●吸血鬼 Vampyr とある館を訪れた青年が、姿をみせない吸血鬼と戦う。全編にたちこめる気配。夢とも現実ともつかぬ映像の妖気(撮影ルドルフ・マテ)。虜になりそうな美しさが、吸血鬼のみならず、作り手への畏怖をよぶ傑作。初の音声作品。70分。 ●怒りの日 Vredens Dag 中世ノルウェーの村。牧師の後妻アンネには魔女狩りの追っ手が迫っていた…。心霊学者でもあった原作者の著作をナチス・ドイツ支配下で完成させた本作は屈指の緊張感をはらんでいる。97分。 ●奇跡 Ordet 大地主ボーオン家の次男ヨハネスは精神を病み、イエスと自称する。三男の結婚話をきっかけに、誠実な一族は信仰の意味を試される出来事にさらされてゆく…。「奇跡」、ただひとつに向かって、この驚異的な物語は、走り、笑い、叫び、泣く。精緻な室内と素朴で透明感あふれる野外の撮影のコントラスト、発露する感情の気高さ。最高峰の傑作だ。126分。 ●ゲアトルーズ Gertrud 著名な弁護士の夫に満足せず、愛こそが最も重要だと考える妻ゲアトルーズは若い作曲家に恋をする。様式美をたたえた遺作。117分。 |
2004
※前売券販売は公開前日までです。 |