●血は渇いてる 松竹ヌーヴェルヴァーグの旗手として1960年に監督デビューした吉田の長編第2作。会社を解雇され自殺を図った男(佐田啓二)が、命拾いしたものの保険会社に利用され、マスコミに翻弄され……。独自の才気があふれる隠れた傑作。87分。 ●秋津温泉 岡田茉莉子が出演百本記念作として自ら企画、吉田に監督を依頼し、今に到る名コンビの出発点となった作品。結核の治療のため秋津温泉にやってきた青年(長門裕之)と宿の娘(岡田)との交流を、敗戦から戦後へ移り変わる時代の変遷とともに描き出した、初期の代表作。撮影:成島東一郎。112分。 ●嵐を呼ぶ十八人 広島・呉を舞台に、造船所で働く18人の臨時少年工と、彼らのリーダー役を務める青年(早川保)の、葛藤に満ちた関係を描く。近年再評価の声が高く、松竹時代の集大成ともいわれる作品。共演:香山美子。108分。 ●水で書かれた物語 松竹を退社した吉田のフリー第一作。母と息子との近親相姦的な愛を、岡田、浅丘ルリ子の2大スター女優競演で描く。世界が光へと溶けこんでゆくような鮮烈な撮影は、鈴木達夫。共演:入川保則、岸田森。120分。 ●女のみづうみ 川端康成の「みづうみ」から着想を得た作品。若い愛人と情事を重ねている人妻(岡田)が、自身のヌード写真を盗まれたことをきっかけに、見知らぬ男からの脅迫に悩まされる……。人間の秘め持つ魔性を見すえた秀作。98分。 ●エロス+虐殺 アナーキスト・大杉栄(細川俊之)と伊藤野枝(岡田)の半生を、論理と情念、大正と現代のせめぎあいの内に描き出した、先鋭的な美しさに満ちた作品。中期の代表作というにとどまらず日本映画史に残る一本だ。海外での評価も高い。撮影:長谷川元吉。音楽:一柳慧。167分。 ●煉獄エロイカ 『エロス+虐殺』の主題と方法をさらに押し進めた、最も迷宮的な傑作。かつて政治活動をしていた男(鵜田貝造)は、妻(岡田)が連れてきた少女と出会ったことで、新たなテロリズムに飲みこまれていく……。117分。 ●鏡の女たち 原爆をテーマに三世代の女性(岡田、田中好子、一色紗英)が、自らの過去と現在を問う、吉田の最新作。ミステリアスな展開の中に、映画表現の神髄、さらなる可能性を凝縮させた比類なき傑作。129分。 |
2005
|