この夏、最新作『街のあかり』が当館でも大好評だったアキ・カウリスマキ(1957年生。フィンランド出身)、待望の傑作選集です。社会の一隅でひっそり生きる主人公たちを静かにとらえながら、カウリスマキ独自の、慎ましげな可笑しさが漂う演出、そして北欧の人々を包む街路や室内の色彩感覚も見事な映像は、みる人すべての胸に暖かい灯りをともすことでしょう。 ★街のあかり Laitakaupungin valot ヘルシンキで暮す孤独な青年が、失った愛をとり戻すまでを、瑞々しい光と影で綴る。アルゼンチンタンゴや北欧のロック等、ラジオやクラブの音響が切なく美しい78分。 ●浮き雲 Kauas pilvet karkaavet 共に失業し、希望を失いかけた夫婦が小さな食堂を開業する。優しさにあふれた96分。 ●過去のない男 Mies vailla menneisyytta 記憶を失った男が、人々の支えと友情によって、いつしか新しい人生と新しい自分を発見する。カンヌ映画祭グランプリ受賞。97分。 ●真夜中の虹 Ariel 閉山で職を失った炭鉱夫と母子家庭の女。不運続きな負け犬人生にも、ユーモアと希望を見い出す、ボーイ・ミーツ・ガールの傑作。73分。 ●ラヴィ・ド・ボエーム Boheemielamaa アキの作品では異質の主人公、パリの貧しい芸術家達を抒情的に描いた。ベルリン映画祭国際批評家連盟賞。100分。 ●罪と罰 Rikos ja rangaistus テクストはドストエフスキー。R・ブレッソンの『スリ』に例えられる長編デビュー作。93分。 ●ハムレット・ゴーズ・ビジネス Hamlet liikemaailmassa 資本主義下のシェイクスピア、という大胆かつ痛烈な翻案作。86分。 ●マッチ工場の少女 Tulitikkutehtaan tytto材木からマッチを生産する工程の淡々とした描写。そこから、黙々と働く青白い顔の娘の衝撃的なドラマが生まれる。至高の輝きを放つ前期の最高傑作。78分。 ●白い花びら Juha 白黒・無声(伴奏あり)の古風な試みで母国の名作をリメイク。映画の本質的な力を呼び戻す感動作。78分。 ●愛しのタチアナ Pida huivista kiinni,Tatjana 鬱屈した青年がもう一つの世界を垣間みる。切なくもチャーミング! 62分。 ●パラダイスの夕暮れ Varjoja paratiisissa キャスト(M・ペロンパー、K・オウティネン)と物語の主題に後の方向性を決定づけた鮮烈な初期傑作。75分。 |
2007
|