○商業映画とインディーズ作品の境界が曖昧になり、ネット配信など映像を送り受け取る方法が大きく変わりつつある昨今。こんな時だからこそ、映像表現のあり方に強い関心を持ちたいものです。自主映画だからこそ、生真面目といわれようが、映像とは何かとの問いかけを作品にこめることが、映像を作ることに他ならないのかもしれません。23回目を迎える今年の自主フェスはそんな作品を集めてみました。七里圭監督が『TOCHKA』に寄せた「表現とは、未熟な己と見知らぬ他者に、刃を向けることなのだ」というコメントが、スタートラインにあるのだと思います。 Aプロ 根室の海岸に打ち捨てられたコンクリート要塞。寒風吹きすさぶ場所で出会うふたりの男女(菅田俊と藤田陽子)の記憶と現在が交錯する『TOCHKA』。虚とも実ともわからない女の言葉と、ギリギリで正気を保ちつつ深い闇に沈む男の魂は、トーチカの闇の中ではもはや朧げな輪郭でしかない。息詰まる空間と時間を見事に演出したのは、映画美学校出身で、長編デビュー作となる松村浩行。93分。 Bプロ 快作『ダンプねえちゃんとホルモン大王』。寂れた港町。家業を手伝わないイカれた「ダンプねえちゃん」が世界ケンカチャンピオン(?)の「ホルモン大王」にひとめぼれ! 男気に溢れた快男児と見えたホルモン大王だが、その実態は……。比類ないシネスコ画面に強烈なインディーズ魂を叩き込み、映画の王道のド真ん中を堂々と歩く藤原章監督最新作。宮川ひろみとデモ田中のタイトルロールを、切通理作、花くまゆうさく、篠崎 誠、高橋 洋ほかの豪華(?)共演陣が支える。110分。 Cプロ 『接吻』で演出力の高さを見せつけた万田邦敏監督が、若手映像作家たちと一緒に作り上げたオムニバス作品『葉子の結婚』。日曜日に結婚式を控えるふたりと列席する人々の6日間を、6人の監督が視点を変えて描く。『シャーリーの好色人生』の佐藤央、第5回CO2で助成資格を得た小出豊、『桃まつり』の長島良江、粟津慶子、矢部真弓が、各パートを担当。計90分。 Dプロ 名古屋市立大で映画製作を始めた、新英今泉力哉監督作品集。第12回水戸短編映像祭グランプリ、第5回CO2入選など受賞歴多数の『微温(ぬるま)』と第10回TAMA NEW WAVE入選の最新作『最低』。二股をかけているだらしない男の別れ話を描く『微温』とストーカーがらみの恋愛悲喜劇『最低』はいずれも二転三転する人間関係をシャープに描き、見事なシナリオ構成力を見せる。計82分。 |
2009 12/19
11:00〜/ 20:50〜 12/20
20:50〜 12/21
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