○昨年、17年ぶりの新作『アンナと過ごした4日間』で、健在ぶりを示したイエジー・スコリモフスキ。60年代に激動のポーランドから登場し、ヨーロッパ映画界を席巻した初期作品の特集です。 ●身分証明書 Rysopis 監督・脚本のみならず主演までもスコリモフスキ自身が果たした長篇デビュー作。当てもなく街を歩き回る青年アンジェイと寄り添うカメラ。踊るように彼と戯れる市電や自動車の軽やかな動き。新しい息吹を確かに感じさせる鮮やかな傑作。75分。 ●不戦勝 Walkower 『身分証明書』から6年後のアンジェイを描いた第2作。アマチュア・ボクサーとして過ごす彼の怠惰な日々。ボクシング・シーンの斬新で迫力ある撮影や、前作を凌駕するバイクと列車の並走ショットの疾走感など、「動くものを撮れ!」と宣言したスコリモフスキの面目躍如たる快作。74分。 ●バリエラ Bariera 原題の直訳は『障壁』。戦後ポーランド社会の抱える問題を象徴的に、そしてアナーキーに描く。大学をドロップアウトした青年と電車で出会った女との旅路は、『気狂いピエロ』を予感させる。全編に即興的な演出とアイディアが満ちあふれ、めまぐるしいまでのスピード感に魅了される。81分 ●手を挙げろ! Rece do gory 『不戦勝』に続く“アンジェイ三部作”の最終章。スターリンの肖像の扱いのせいで国内上映禁止になり、長きに渡り祖国ポーランドで映画製作を断念するきっかけとなった、いわく付きの作品。81年カンヌ映画祭上映のために追加撮影したプロローグ付のヴァージョンでの上映。80分。 |
2010
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