ペドロ・コスタ21世紀映画の最前衛に立つ、ポルトガルの至宝。1959年生まれ。リスボン大学で歴史と文学を専攻後、国立映画学校で学ぶ。ヴェンダースの『ことの次第』にスタッフ参加し、89年から映画作家として本格的に活動開始。オリヴェイラ作品のプロデューサー、パウロ・ブランコと組んだ『溶岩の家』などで注目を集め、美しい自然光が織りなすコントラストが見事な映像と、深い心理洞察が反映された『ヴァンダの部屋』など、リスボンのスラム地区で撮影し続けた諸作で、世界の度肝を抜いた。 ●何も変えてはならない Ne Change rien 女優ジャンヌ・バリバールの歌手としての姿を捉えたドキュメンタリー最新作。レコーディングからリハーサル。フランスから東京へと場所を変えて歌い続けるバリバール。豊かな表情を見守るP・コスタの視線に同化しつつ、音楽の生まれる瞬間に立ち会う快楽を味わう103分。 ●ヴァンダの部屋 No Quarto da Vanda 静溢で美しく、ダイナミックなドキュメンタリー作品。ロカルノ、カンヌ、山形などの国際映画祭で高く評価された。取り壊し途上の街の片隅で行き交う人々の息遣いが、ヴァンダの粗末な部屋を中心に定点観測のように捉えられ、麻薬と倦怠に満ちた崩れゆくスラムの日常が、生々しく映し出される。あまりにも短すぎる178分。 ●コロッサル・ユース Colossal Youth/Juventude em marcha 『ヴァンダの部屋』を撮影した地区の再開発が進む。強制移住させられた集合住宅に馴染めず、旧スラムと新築アパートを行き来する移民労働者ヴェントーラ。突然消えた妻の姿を探し求める彼は、「子どもたち」であるヴァンダたちを訪ねるのだが…。155分。 ○短編集(3作品) 政治犯の強制収容所の記憶の離散をめぐるタラファル(Tarafal)、敬愛するストローブ=ユイレを撮った六つのバガテル(6 Bagatelas)、うさぎ狩り(The Rabbit Hunters)の計57分。 |
2010
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