●海炭市叙景 90年に志半ばで世を去った小説家佐藤泰志が、故郷函館を舞台に綴った連作短編集から、いくつかのエピソードを選び、『ノン子36才(家事手伝い)』で映画芸術誌2008年ベストワンに輝いた熊切和嘉監督が、函館の人々と作り上げた傑作と呼ぶのもためらわれるほどの傑作。街に暮らす人々の日々の生活に、加瀬亮、小林薫、南果歩、三浦誠己、谷村美月、竹原ピストルらが見事に溶け込み、哀しみも喜びも、そして、身体の痛みまでも伝える。特に竹原と谷村が演じる兄妹は、あまりにも痛切。 不況の波が押し寄せる海炭市。造船所もかつての賑わいはなく、進水式に喜ぶ兄妹(竹原と谷村)は、初日の出を見るためのロープウェイの切符代にも事欠き、プラネタリウムで働く男(小林)は妻(南)との不和や息子との距離感を埋められず、プロパン燃料店の若社長(加瀬)は商売の行く末や家族との溝に苛立ちを爆発させる。立退きを迫られた老婆(熊切監督が発見した本作品限定の逸材)は途方に暮れ、故郷に馴染めない男(三浦)が眺める街は霧に煙る。そんな日々の暮らしの上を雲が流れ、雪が積もる。近藤龍人の撮影が美しく、ジム・オルークの音楽が包む152分。 |
2011 2/5(土) 〜2/18(金)
2/19(土) 〜2/25(金)
前売券 一 般 1400円 大学生 1400円 会 員 1200円 当日券 一 般 1700円 大学生 1500円 シニア 1000円 中高予 1200円 会 員 1300円 |
監督 熊切和嘉
原作 佐藤泰志
脚本 宇治田隆史
音楽 ジム・オルーク
撮影 近藤龍人
照明 藤井勇
録音 吉田憲義
美術 山本直輝
スタイリスト 小里幸子
編集 堀善介
出演 加瀬亮、小林薫、南果歩、谷村美月、竹原ピストル、大森立嗣、あがた森魚、伊藤裕子、村上淳 他
2010年 152分