●堀川中立売(ほりかわなかたちうり) 歴史の街・京都には、未だ人々の目に現われていないパラレル・ワールドがある! 熊切和嘉、山下敦弘らに続いてデビューした大阪芸大出身の第三の男・柴田剛。長崎原爆への妄執を描いた『NN-891102』と障害者問題を突いた『おそいひと』の、超問題劇映画に続くまたしても問題新作が、東西公開を経て名古屋へ勇躍。ギャラクシーの彼方からやってきた謎の妖怪「加藤the catwalkドーマンセーマン」によってじわじわと支配される京都。そして、妖怪成敗に、地球へ降臨した陰陽師・安倍清明。一方、古来、凛とした生活が営まれてきた美しいこの街に、クズに等しく蔑まれる人間たちが蠢いている。自称・ホームレス評論家のツトム(山本剛史)と歪んだ私生活をおくるビジネス・ウーマンのヒモ、信介(石井モタコ)。加藤退治に、日給千円で安倍が抜擢したのは、なんとこの二人だった! 124分。 舞台挨拶決定しました! 5月15日(日) 15:50 /18:00 /20:10(各回上映前) 出演 柴田 剛(監督)、野口雄介(出演者) リアルは、終わらない 『堀川中立売』柴田剛監督に聞く 長篇デビュー作の『NN-891102』('99年)では長崎原爆の爆音に妄執する男、『おそいひと』(2004年)では障害者の連続殺人者を生み出し、『堀川中立売』には、14歳の時「正義感殺人事件」で惨劇を起こした寺田という主人公の刑期後が描かれています。 これまで一作一作が単体として存在するのではなく、すごろくを進めていくように制作をしてきました。『おそいひと』は、ハンディキャップのある殺人者で、その動機すら判らない。判らないもやもやを、演じた障害者の住田雅清さんの肩に乗っかって、彼の目に見えている景色を追いかけるように僕も見ていきました。まだ追いつけていないと思いながらも完成させました。 制作に4年を経た訳ですね。 その先に、まだ何かあるということが、必然的に『堀川中立売』(以下、堀川)の寺田へと続きました。3年前『おそいひと』を配給したシマフィルムの京都オフィスに拠点を移しましたが、その前の東京にいた時期に通勤で馴染んでいた秋葉原で無差別殺人事件が起こり、直後の風景が、がらりと変わったんです。節操なく人々が行き交っていた秋葉原を歩く誰もが、背後を警戒しているようで。今の、東北大震災後の東京のようです。震災の影響は、今後10年は続くと言われていますが、秋葉原では、その異変を目にしながら、やがて事件は風化してしまうのだとも同時に予感されました。事件当初の重大性が、やがてあふれかえる社会の情報のスピードに回収されてしまうと。そこから、むしろ、加害者が営んでいた日常を知りたいと思いはじめました。 社会と個人との間の現実的な距離から、主人公が生み出されていったのですね。『おそいひと』の住田さんは、寺田の保護司役で登場し、寺田にある決断を迫りますが。 保護司の立場から寺田を観察し、世間になり代わって寺田を追い込み、同時に寺田の理解者でもある、一筋縄ではいかない人間。二人が対峙するシーンでは、野口雄介が、もはや人では無い精神へと変貌していく寺田を、シナリオを読み込んで演じています。自分自身の中でひっかかったままになっていることこそを作りたいと思うし、それをスタッフや出演者のアイディアと共に撮影現場の静謐の中で、ことばの重さを模索し、実験しながら映画を作ってきたと思います。今後はまた違った演出をしていくということも今は考えています。 彼らだけでなく、『堀川』で描かれる人物や出来事が織りなす層は、堀川通りと中立売通りの交錯する地名が京都ローカルらしくもあり、同時に日本有数の眼鏡橋があったり、晴明神社があったりという、ロケ地の気配からも感じます。 隣接する、一条戻り橋は此岸と彼岸をつなぐと伝えられ、制作オフィスのある地所は、霊界の通り道なのだとか。 オカルト、惹かれますか? 小学生の夏休みの自由研究が、「白魔術/黒魔術」。澁澤龍彦を読んでました(笑) 撮影アングルはシーンごとに奔放です。カメラ・ポジションが大変だったのでは。 撮影監督の高木風太はじめ、これまで様々な経験を積んできた仲間がそれぞれに培った技術を持ち寄ってくれました。 ポストモダン生活の表層でも成立する京都の路地や町家を、もっと普通でいいんだと感じさせる生活感が映し出されています。 長屋や町家に住むいろいろな人と知り合って、もちろんきれいに住んでいる人もいますが、転がりこんだ先は、夜になると騒ぐ猫がいたり、冷蔵庫すら使っていなかったり。でも、建具のガラス戸をよく見ると、透けたガラスの中に護符の星型印が光っていて、これは外の世界と内の世界との結界なのかとか、京都に住んでみてそういうことが自然に目に入ってきました。 なにもせずに現世を飄々と生き、同時に冥界で闘う、ヒモの信介とホームレスのツトムが出てきますが、一方の、ヒモを養いかつ依存するOLサエからは、仕事や恋愛に煮詰まった痛みが伝わります。 狭い部屋で視線がカチ合うような息詰まる生活。自分が通ってきた道とでも申しましょうか(笑)演じてもらうなら、おおよそ正反対な女性ということで清水佐絵に。18歳で撮った作品『MY beautiful EGO』がPFFアワード2000で新藤兼人監督に激賞された芯の強い人です。 『堀川』の次の制作が、愛知芸術文化センターのオリジナル映像作品第19弾『ギ・あいうえおス ─ずばぬけたかえうた─』。 『堀川』を終え、ずっとこだわってきた映画というものと異なる映像表現での制作に当たり、それは僕にとってのバンドと実験映像なんだ、と。映画という音楽を奏でているバンド。「ギ……」がバンド名で「ずばぬ……」がサブ・タイトル。この作品も形は未定ですが、続いていくんだと思います。 (2011年5月7日 構成=編集部) |
2011 5/14(土) 〜5/20(金)
5/21(土) 〜5/27(金)
前売券 前売券販売は5月13日までです。 一 般 1000円 大学生 1000円 会 員 1000円 ※劇場限定前売券「特製おふだチケット」1000円 当日券 一 般 1700円 大学生 1500円 シニア 1000円 中高予 1200円 会 員 1300円 |
監督 柴田剛
製作総指揮 志摩敏樹
脚本 松永後彦
撮影 高木風太
照明 岸田和也
録音 東岳志
美術 金林剛
助監督 匂坂力祥
制作担当 金城恒次
編集 高倉雅昭
出演 石井モタコ、山本剛史、野口雄介、堀田直蔵、祷キララ、秦浩司、清水佐絵、石崎チャベ太郎、とんとろとん、柴田裕司、宮川ひろみ、井上亮平、常川篤史、古澤彰、タージン、志賀勝、桂雀々、住田雅清 他
2010年 124分