キッズ・リターン


 『その男、凶暴につき』('89)にはじまり、『3-4X10月』('90)、『あの夏、いちばん静かな海』('91)、『ソナチネ』('93)、『みんな〜やってるか!』('95)と、 たえず日本映画界に波紋を投げかける異色の傑作を連打してきた北野武。交通事故によるブランクを経て、ようやく登場した最新作『キッズ・リターン』は、鋭ぎすまされた感覚と、高い完成度を同時に維持した正真正銘の最高作だ。
 主人公のシンジ(安藤政信)とマサル(金子賢)は高校の同級生だが、完全な落ちこぼれ。担任(森本レオ)はじめすべての教師から見放され、 「授業の邪魔だけはしないでくれ」と頼まれる始末。2人は、そんな教師をからかったり、カツアゲしたり、その日その日を楽しく遊んでいた。 ある日、金を巻き上げた相手の助っ人にあっさりKOされたマサルは、ボクシングに目覚める。シンジも付き合ってジムに入門するが、 ジムの会長(山谷初男)の眼は、シンジの方に注がれていた。スパーリングでシンジが軽やかなカウンターをマサルに浴びせて以来、2人の歩む道は次第に離れていく。 新人戦でデビューし、順調に勝利を重ねるシンジ。一方マサルは、偶然出会ったヤクザ(石橋凌)に惹かれ、組員として台頭していく……。108分