ユ−リ
ゲームの最中に誤って殺してしまった恋人野々村(永瀬正敏)を入れた冷蔵庫“ユーリ”(初めて宇宙にでたロシア人ユーリ・ガガーリンからとられている)を運ぶ七美(坂井真紀)
に恋した雅之(いしだ壱成)と、七美を手伝うイラン人青年アミール(「笑っていいとも」で好評のオミッド・モラディ)の捉えどころのない数日間を描く。
『東京ラブストーリー』や『二十歳の約束』などの大ヒットドラマの脚本家として注目される坂元裕二の監督デビューとなる本品でも、もちろんシナリオは自身の書き下ろしで、
かつてパリで出会ったひとりのアフリカ人の印象が反映しているという。自伝的な要素を持つらしいフィルムのあちこちには、かつて目にした様々な映画の断片が息づいている。
例えば、沈んでいく“ユーリ”の姿に最近のニュージーランドの映画を連想してしまうかもしれないが、それは初監督作品としては無理からぬことだろう。
なによりも、彼が描こうとしている、三人の間を漂う空気にひろがる、“存在感のなさ”そのものが注目されるべきだ。
いしだ壱成、坂井真紀、永瀬正敏という今が旬のキャスティングが、当館には不似合いなほどの新鮮さだが、この顔合わせこそが、
そこに漂う空気に微妙なリアリティをもたらしているはずだ。音楽担当の藤原ヒロシをはじめ、『ヘルプレス』の青山真治監督と『この窓は君のもの』の古厩智之監督がスタッフ参加し、強力にバックアップしている。102分。