ワン・プラス・ワン One Plus One


 1968年、五月革命のさ中、ゴダールは一時パリを離れ、ロンドンで「悪魔を憐れむ歌」をレコーディング中のローリング・ストーンズを撮影した。『中国女』『ウィークエンド』 と政治的主題により接近していた当時のゴダールは、デカダンと革命の間で揺れ動いているヨーロッパの現実を、ストーンズを使って表現できるかもしれないと考えたのだ。
 偶然か、必然か、ロック史上に残る名曲の録音に立ち会うこととなったゴダールは、ほとんどのテイクをワンシーン、ワンカットで撮影。ミック・ジャガー、キース・リチャード、 ブライアン・ジョーンズらの表情を克明に捉えつつ、その一方で都市の廃墟で奇妙に儀式化された革命劇を演じる黒人たちや、アメリカ人捕虜の前でヒットラーの「わが闘争」を 朗読するポルノショップの主人らの映像を挿入した。異質な映像の〈間〉に立って、観客(と作者)が途方に暮れつつも思索し続けることが、ゴダールの意図であり、願いなのだろう。 共演A・ヴィアゼムスキー。101分