万事快調  Tout Va Bien


 昨年ようやく上映された『勝手に逃げろ/人生』に続き、ゴダールの幻の傑作がまた一本新たに初公開される。イヴ・モンタン、ジェーン・フォンダという二大スターを主演に迎えた'72年の作品『万事快調』だ。
 『ワン・プラス・ワン』が69年に公開された後、ゴダールはマオイストの闘士ジャン=ピエール・ゴランらとジガ・ヴェルトフ集団を結成、「政治的映画を政治的に撮る」ことを旗印に、主にヨーロッパ各国のTV局から資金を調達し、『プラウダ』『東風』などの16mm作品を連作した。それら非商業主義的映画の旅を経て、政治的ラディカリズムと映画の力を両立させつつ、より多様な観客との出会いを求め4年ぶりに劇場映画に帰還したのが本作である。さえない現実への苦渋とは無縁の活力が全編にみなぎり、ゴダール特有のカオスのスペクタクルが存分に展開する作品だ。
 モンタン扮する映画監督とフォンダ扮するアメリカ人ジャーナリストは、スト決行中の食肉工場へと取材に向かうが、逆に社長と一緒に監禁されてしまう。どこか喜劇的なスト騒ぎの末、5日ぶりに解放された2人の日常は微妙に変化かしていた…。95分。