ロメール恋愛講座「六つの教訓的物語」から


 76歳の高齢でありながら、毎年新作を発表し続けるエリック・ロメール。近年では、92年『木と市長と文化会館』、94年『パリのランデブー』、そしてリバイバル・ヒットとなった70〜80年代初期の傑作(『美しき結婚』ほか)。これらの作品は日本のシネフィルたちにとって、フランスから届く祝祭の贈りものとなっている。麻紐をかけただけの簡素なその小包は、精緻な人間考察(何といっても、76歳なのだから!)と、即興のように瑞々しい映画ならではの時間(76歳?本当に!?)が絶えず再生の喜びを奏でている。日常生活における大いなる冒険の作家として今もヌーヴェル・ヴァーグを体現するエリック・ロメールの新作『夏物語』と共に、60年代の集成である連作〈六つの教訓的物語〉から初公開二作品を、モーニング・ショーでお楽しみください。

●モンソーのパン屋の女の子 La boulangere de Monceau


 ぼく(声:ベルトラン・タヴェルニエ)はパリのローマ通りに住んで法学の勉強をしている。学期末に近い5月、画廊に勤める背の高いブロンドのシルヴィーと出会う。前から気になっていた彼女に勇気を奮って声をかけると満更でもない雰囲気。しかし学期末試験の間は恋愛をお預けにしようと決心し、決心しながらも、どこかでばったりシルヴィーに出会えたらよいのにと、彼女の出没しそうなモンソーの界隈へと足が向く。ある日、サブレを買おうとして、珍しくもないパン屋へ入った。店番の娘は全く、ぼくのタイプなんかではない。が、しかし……。26分。【モノクロ】

●シュザンヌの生き方 La carriere de Suzanne


 18歳の薬科大学1年生ベルトランは、友人ギョームの華麗な女たらしの遍歴にいつもあきれている。今日も通訳学校に通うシュザンヌという女の子をカフェで瞬く間にひっかけてしまう。やがてギョームはシュザンヌに飽き、それが理解できない彼女は相談相手のベルトランにもつきまとう。偽悪者を装いがちなギョームは、ベルトランと組んでシュザンヌから、遊興費をたかるようになった。52分。【モノクロ】