ベンヤメンタ学院 Institute Benjamenta, or this dream people call human life
アート・フィルムの頂点といわれるパペット(人形)アニメの傑作『ストリート・オブ・クロコダイル』を大ヒットさせた、双子の映像魔術師ブラザーズ・クエイ。その最新作『ベンヤメンタ学院』は、彼らにとって初の試みとなるライブアクション(実写)の長編劇映画だ。クエイならではの幻想的なセット、得意のアニメーション・シークエンスに、謎めいた“物語”の魅力が加わって、かつてないシュールな迷宮の美が誕生した。フィルムアーティスト、ブラザーズ・クエイの面目躍如たる意欲作だ。
定かならぬ時、定かならぬ街。死の匂いを漂わせる荒れ果てた建物。そこは執事養成学校ベンヤメンタ学院。ここではひたすら服従することを学ぶため、一つのレッスンを際限なく繰り返す独自のカリキュラムが組まれている。入学したヤーコプはレッスンに励みながら、いつのまにか学院の秘密に引き寄せられ、院長ベンヤメンタの妹で唯一の教師であるリーサの奥深い部屋へと導かれていく。彼はそこで驚くべき体験をすることになるだろう……。
原作はフランツ・カフカが最も敬愛したスイスの異端の作家ローベルト・ヴァルザーの「ヤーコプ・フォン・グンテン」。孤独と放浪の人生を送りながら、狂おしい愛に満ちた不思議な物語を創造し、生涯を精神病院で終えたこの作家にも注目したい。105分。【カラー】