フレンチ60' s シネマ・フェア




Aプロ 地下鉄のザジ  Zazie dans le Metro


 先頃亡くなったルイ・マル監督のスラップスティック・コメディ。いちばん楽しみにしていた地下鉄は、たまたまストライキで動かないけれど、ひとりで探検するパリの街は、知らないことばかりで、目がまわりそう。ちょっと、恐い目にあったりもするけれど、この街は大人の雰囲気がする。田舎から初めてパリに遊びに来た10才の少女ザジの目に写る、めまぐるしい都会の風景が活写される。92分。

Bプロ 危険な関係1960 Les Liaisons Dangereuses 1960


 退廃的な情事にふける貴族社会の内幕を皮肉ったラクロの18世紀の小説を、1959年のパリを舞台に置き換えて映画化したのは、元祖プレイボーイ監督、ロジェ・ヴァディム。ジェラール・フィリップとジャンヌ・モローの外交官夫婦が、ゲームのつもりで始めた不倫のサヤあてが、思いがけず意外な方向へと展開する。外交官役でボリス・ヴィアンが特別出演しており、貴重な作品と言える。110分。

Cプロ タンタンとトワゾンドール号の神秘 Tintin et le Mystere de la Toisondhor


 愛らしいキャラクターで知られるフランスの有名な絵本シリーズ、「タンタンの冒険」。世界中にファンを持つ(『クレイマー・クレイマー』のなかで、ダスティン・ホフマンが手にしていることを川本三郎氏が指摘している)このシリーズを実写で映画化したのがこの作品。盟友から譲り受けた海洋船で航海に出たハドック船長、タンタン。ところが何の取り柄もないこの船を法外な値段で買いたいとの申し出。ふたりの知らぬ秘密がこの船には隠されているのだろうか?100分。

Dプロ ●ぼくの伯父さんの授業 Cours du Soir


 ジャック・タチ監督作品の中で空前絶後のスケールで知られる『プレイタイム』の撮影中に作られた短編作品。タチがパントタイムの実演を交えながら、演技の真髄を教えるというもの。27分。

Dプロ ●ジャック・タチの新のんき大将 Jour de Fete


 当館でもモノクロ版で公開した、軽やかに自転車で駆ける郵便配達を演じるタチの傑作が、タチの悲願だった鮮やかなカラー・プリントで再登場。にぎやかなお祭りが彼の街にやってくる。色鮮やかに飾られる万国旗を結びつけるポールをたてるのに人々はおおわらわだ。人々の間をぬうように走り抜ける郵便配達の自転車は今日も軽快だ。70分。

Eプロ パリところどころ  Paris vu par…


 ヌーヴェル・ヴァーグ全盛の65年、気鋭の6人の監督が想い想いにパリの風景を短編にまとめたオムニバス作品。E・ロメール、J=L・ゴダール、C・シャブロルら、監督6人の顔ぶれもきらびやかだが、主題も手法も全く異なる6作品で、6人の監督それぞれの想いを込めて映し出されるパリの街は、それぞれ全く違った変貌を魅せる。饒舌なロメール作品、パリの街からやや距離をとったゴダール作品の面白さはもちろんだが、J・ルーシュによる第2話は、街角でナンパする男とナンパされる女のやり取りと彼らの人生の断片を、15分間ほぼワンカットで力強く描写する。97分。

Fプロ タンタンと水色のオレンジ Tintin et les Oranges bleu


 「タンタンの冒険」シリーズ第2弾。世界規模の飢饉を救うカギとなる、青色に発光する不思議な果物ブルー・オレンジをめぐる滑稽活劇。深刻な飢饉の打開を訴える珍発明家ターンソル教授とタンタンは、盗まれたブルー・オレンジを追って、スペインへとわたる。しかし、またもやタンタンは思いがけない事態へと巻き込まれてしまうのだった。ほのぼのとした原作のキャラクターが、ユーモアたっぷりに描かれる。105分。