『パリでかくれんぼ』


●パリでかくれんぼ Haut bas fragile
 『美しき諍い女』『ジャンヌ』と重厚精緻な大作が続いたリヴェットが、久々にパリを舞台にした軽やかな冒険の世界に戻ってきた。『北の橋』『彼女たちの舞台』などで見せたミステリアスなゲームのような構成に、新たにミュージカルの要素をプラスした、楽しくて不思議な味わいの作品だ。
 やくざな生活から足を洗い、宅配のバイクのドライバーになったニノン(ナタリー・リシャール)。5年間の昏睡状態から目覚めたばかりのルイーズ(マリアンヌ・ドニクール)。古い歌を手がかりに母親を探しているイダ(ロランス・コート)。3人のすれ違い、からみあう人生に、クラブ歌手サラ(アンナ・カリーナ)や、舞台美術家ロラン(アンドレ・マルコン)らが、近づいてはまた遠去かる。陰謀や暗号、恋心や友情に、導かれ、惑わされるほどに、魅力を増していく彼女たち。リヴェットの魔法のような演出が、その美しさをさらに極立たせる。至福の169分。