ジャック・リヴェット フィルムコレクション


●セリーヌとジュリーは舟でゆく Celine et Julie vont en bateau
 時間の流れを忘れさせる魔法のようなリヴェット作品の中でも、その蠱惑に満ちた表現を極めた傑作。駆出しの魔法師セリーヌと図書館員のジュリーがアリスのように現実と夢を巡り、郊外の屋敷にまつわる忌まわしい過去の秘密を解く。192分。


●北の橋 Le Pont du Nord
 ドンキホーテのように、刑務所から出所したばかりのマリーと荒唐無稽なバチストの二人の女性が、双六遊びの感覚でパリをさ迷う、アドリブと遊戯性の発揮された快作。ビュルとパスカルのオジェ母娘の共演。127分。


●地に堕ちた愛 L'Amour par terre
 大邸宅で演劇のリハーサルに参加したエミリー(J・バーキン)とシャーロット(ジェラルディン・チャップリン)は虚実の交錯するスリリングな創作過程に心身とも巻き込まれる…。結末に至るまで重層的に構成され、リヴェットの創造活動の一端をも感じさせる。撮影はW・ルプシャンスキー。ジャン・ユスターシュも友情出演。125分。


●彼女たちの舞台 La Bande de quatre(特別参考上映作品)
 演劇学校に集まった5人の女学生。彼女たちはラシーヌやモリエールを学ぶ厳しいレッスンを受けながら、それぞれの混沌とした生活の秘密を固守しつつ、簡単には訪れることのない何かを待っている。ヌーヴェル・ヴァーグの先駆者でありながら日本での劇場公開が遅れたリヴェットの評価を一躍高めた傑作。160分。


●修道女 La Religieuse(初公開)
 反教会的な作品として一世紀間発禁になったドニ・ディドロの原作の映画化。18世紀フランスで、戒律を拒否し自由への戦いを挑む修道女シュザンヌ(アンナ・カリーナ)を描く。完成直後には、原作同様、一年間の上映禁止となり、間隙をぬって出品されたカンヌ映画祭でも大きな議論を呼ぶ。リヴェットはその即興性を評価されてきたが一方、構想5年という本作のように入念な演出もこなしている。精緻な脚本は『アデルの恋の物語』のジャン・グリュオー。141分。


●嵐が丘 Hurlevent(初公開)
 エミリー・ブロンテの神秘的かつ暴力的なまでの愛を描いた原作を、1930年代のフランスに舞台を移し映画化。仏語版原作「嵐が丘」の挿し絵になっているバルテュスの画やバタイユの論考に刺激されたというリヴェットは、荒野のなかで、激しい憎悪にさらされながらも情熱に生きる永遠の恋人達を、現代にも残る野性的な力でとらえている。130分。

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