『たまあそび』


●たまあそび
 『HEAVEN-6-BOX』『優勝−Renaissance』などの実験映画から『あなたがすきです、だいすきです』『エクスタシーの涙 恥淫』などの劇場用映画まで、異なる映画作りの場を自在に行き来しながら軽やかにフィルムをまわし続ける大木裕之。愛知芸術文化センター製作の『3+1』も遂に完成した彼の、劇場用映画最新作。
 ある会社に出向してきた主人公・子規。新しい課長は、子規が以前野球部のセカンドを務めていたことを聞き、部の設立を提案する。子規は前の会社で同僚との同性愛がバレ、実はそのために左遷されて来ていた。初試合の日、彼の前にかつての恋人・是空が現れる。しかし子規の心はいつしか新しい同僚・健への想いを秘めていた…。
 脚本は、榎戸耕史の『渇きの街』で注目を集めている南木顕生。硬派のピンク映画専門誌「PG」編集長をして“こんな優れた脚本は筆者の知る限りのピンク映画ではかつて無かった”と言わしめた、実験性とドラマ性をあわせ持った傑出した脚本を、大木ならではの映像感覚で、さらに飛躍、拡張。映画、野球、短歌・俳句などのスタイルを意識的に織りまぜつつ、独自の映像世界を追及し、また同性愛という“生きるスタイル”をも問うていく。出演=橋口保祐、葉月螢ほか。60分。