ケン・ローチ、アンコール『ケス』『大地と自由』


●ケス Kes
 近年、日本での評価も急上昇しているケン・ローチ。冷酷無情な世界の中で、傷つきながらも生きている様々な人々を見つめてきたこの作家には、新たな映画の勇気を感じずにはいられない。本作は一羽のハヤブサを飼ったことをきっかけに、無気力な日常からふと飛翔する少年を追った、ローチの出世作にして、60年代英国のベスト・フィルムと言える一本。112分。

●大地と自由 Land and Freedom
 歴史を問題にすることはあっても、かつて起こった出来事をドラマとして全面展開することは少なかったK・ローチが、初めて20世紀の戦争〜スペイン内戦(1936-39)を正面から取り上げた。気迫に満ちた新作。義勇兵として内戦に参加した英国人デヴィット(イアン・ハート)を主人公に、戦いの現実や反ファシズム勢力内部での対立などを無名兵士の視線で捉え、カンヌ映画祭でも絶讃をもって迎えられた。理想に燃えて闘い、死んでいった人々への敬意のこもった追悼と、彼らから何を継承できるかという真摯な問いが胸をうつ、入魂の力作。110分。

○黒木和雄 1930年宮崎県生まれ。少年期を中国北東部(旧満州)で暮らす。'54年岩波映画に入社、羽仁進と並ぶエースと目された。'66年初の劇映画『とべない沈黙』を発表、当時の日本の現実に鋭く切りこんだ作品と高い評価を得る。他の代表作に『日本の悪霊』『竜馬暗殺』『TOMORROW・明日』など。K・ローチについては「映画芸術」381号に「絶望と希望のアポリア」と題した評論を執筆し、深い共感を寄せている。今回は、自身の映画観と重ねあわせつつ、ローチの魅力を語っていただく予定。