『さすらいの二人』公開記念 M・アントニオーニ特集


●太陽はひとりぼっち L'Eclipse
 現代人の心の空漠感や人と人との断絶を、折々の時代性を取り入れつつ、鮮烈な映像の中で語ってきたミケランジェロ・アントニオーニ。本作はモニカ・ヴィッティを主演に連作した『情事』『夜』に続く中期の代表作。主人公ヴィットリア(M・ヴィッティ)は証券取引所で会った仲買人のピエロ(アラン・ドロン)に心惹かれるが、2人の心には愛情を持っても埋められないうつろな何かがあって、どうしても互いを信じきれない。大ヒットしたジョバンニ・フスコの主題曲が切なく響く。124分。

●欲望 Blow Up
 アントニオーニが母国イタリアを離れ、ポップカルチャー全盛期のロンドンで撮影したスリラー。キャメラマンのトーマス(デヴィット・ヘミングス)は、深夜の公園でデート中のカップルを盗み撮りしたことから不思議な事件に巻きこまれる。ヘミングス、ヴァネッサ・レッドグレイブ、ジェーン・バーキンといったキャスティング、撮影カルロ・ディ・パルマ、音楽ハービー・ハンコックといったスタッフの編成にも、アントニオーニの新時代が感じられる。ヤードバーズも出演! 111分。

●さすらいの二人 The Passenger
 『砂丘』に続くアントニオーニの長編劇映画。ジャック・ニコルソン、マリア・シュナイダーという二人のスターを主演に、死んだ男に成り代わって別の人生を生きようとする男の旅を、ロードムーヴィのタッチで追う。自らの人生への不満と、他人の人生への願望は、北アフリカからバルセロナへの行程の中で、いつしか現実と非現実の境界に達し、幻惑的クライマックスに到る。124分。