『コーカサスの虜』ROAD SHOW


 ある日、普通の生活を送っていた子供が戦場に送りこまれる。ライフルを持ったことも、人を殺したこともない、まだ男ですらない若者が、突然、戦闘の中に身をおく。仲間は次々に殺され、ワーニャ(セルゲイ・ボドロフ・ジュニア)と准尉(オレグ・メンシコフ)は、捕虜としてコーカサスの小さな山村に連れてこられる。彼等を捕まえたアブドゥル・ムラット(ドジェマール・シハルリジェ)は、ロシア軍に捕まっている自分の息子と彼等を交換したいのだった。捕虜を見張るのはロシア軍に舌を切り取られ口のきけないハッサン(アレクサンドル・ブレエフ)、食事を運ぶのはアブドゥルの一人娘ジーナ(スサンナ・マフラリエヴァ)。ごくゆっくりと、微かに、憎しみや恨み以外の感情が生まれる気配がつたわってくる。
 主演のメンシコフはニキータ・ミハルコフ監督作品『絆』でデビューし、『太陽に灼かれて』では主役を演じた。若い兵士のワーニャを演じるのは、この映画の監督であるセルゲイ・ボドロフの実の息子。当初、俳優を続ける予定はなかったが本作の成功によりロシア若手俳優の中でも一二を争う人気俳優となり、ミハルコフ監督の最新作『The Barber of Siberia』にも出演している。撮影は、ミハルコフ監督作品『光と影のバラード』『愛の奴隷』『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』などを手がけたパーヴェル・レベシェフ。ロケの行われた村では電気が自由に使えず、撮影用の発電機も数日で壊れたが、自然光で撮影されたショットの清冽な美しさが逆に心に染み込んでくる。95分。